恋/yukimura
うように 次第に緩やかになる
4本の腕で拵える2つの小さな檻
誰かが吹いているのかもしれない
頭のどこかでフルートの薄い音が
無感情な旋律を並べて消えた
女は起き上がり、服を着て立ち去る
俺は当然のようにそれを見送る
女は微笑みながら一言だけ口にした
「私が帰ったら寂しい?」
寂しい?
ないよ。
「寂しくない」
抗うようにそう呟いた
窓を叩く
涙のような雨が予感させている
俺にもきっと
行かなきゃならない場所があるんだ
船はゆっくりと沈んでいく
悲しい温もりに覆われた 新しい世界へと
無数の気泡が水面へ昇っていく
肉声を持たない船体の 惜別の辞の
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