そこにある空/夕凪ここあ
ない夕暮れ
横顔を見ていると
少女のいた遠いところ
を知りたくなるが
ページを捲る
無機質な音ばかり
部屋にこだまする
あの窓から
見れたらいいのに。
知りたいことには
何一つ触れられない
無機質な放課後
踊り場の
階段の上から二段目に
腰掛けて眺める景色
空は
偽物みたいに青くて
もしかしたら
本当に偽物なのかもしれなかった
あの窓から覗く景色は
いつだって違う
寄り添いながらまどろむ
少女の声
飛行船よ
途端に悲しくなって
名前を呼ぼうにも
最初の一文字すら知らない
遠いところから来た
そのことばかり
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