そこにある空/夕凪ここあ
かりが渦巻いて
私とは違う制服を着た少女が
横で微笑む
のを一度だって見たことはなかったし
寂しすぎる横顔
さよならの時間だね。
合図のように
あの窓から
一斉に風が吹いた
瞬きをして
もう、いなかった
少女はきっと
空の底に沈殿していった
その証拠に
空は
虚ろ、みたいな色だったから
そんな夢を見た。
まどろみの終わりに
少女の手が触れた
ぬくもりを知らない、冷たさ
私の知ってるやさしさの温度で
握り返したいのに
目覚めたときに
少女の姿はなく。
明日になれば
明日になれば、
なんて思いつつ
もう少女に出会えないことを
きっと知っていた
今でも
たまに思い出す
さよなら、の声の高さ
見上げた空に少女だけが見た飛行船があったらいいのに
もう遠いところなんて、どこにもなかった。
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