落合朱美さんの詩集『思惟』(詩遊会出版部)の感想 を書いてみたりします/光冨郁也
 
月が笑いながら
 墜ちてゆくのを
 見とどけてしまった
 罪

という連で始まる。昼間の青空に、冷めた小さな月が傾いていくような、落下していくような、そんなイメージをして、“罪”と記す。

 サルビアの
 紅が憎くて
 泣き叫ぶのもかまわず
 摘み取ってしまった
 罪

続く2連では、より鮮やかにサルビアの紅い色彩に、それはまるで血のような、傷や痛みを感じさせる、そんなイメージをして、“罪”という言葉を置く。

そのごの連では、「やがてアタシは/切り裂かれる」として、話者の痛みは極みを迎える。そしてラストの連の「おねがい/もう 誰も恨んだりはしないから」と哀切な言葉で
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