金色の海で/蒸発王
 

同窓生しか知らない
大学の裏道

あのイチョウ並木だけ

無数の黄色い扇が
風にあおられ
ざざ と
波の音を作り
私の足元に打ち寄せる


夕暮れ時
ねばついた
瀕死の日光が
斜め25度の角度から
ゆっくりと挿入される
蕩け出した黄金に
瞳が焼かれるような錯覚を覚え
目を閉じれば
冬に食われる秋の匂いがした


金色の海で

波の音が
高く 大きく
私の鼓膜を持ち上げ
閉じた目を開くと

金色の海の上に

見なれた靴

少しづつ
目を上げる
踝 
足  



まつげで曇った視界
2メートル先に
一瞬だ
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