アヅマウタ/三州生桑
でしまひます。
詩とは何でせう?
万葉集・巻十四に、東歌(あづまうた)があります。
東歌とは、東国地方の、一種の民謡です。
作者は、いづれも判りません。
当時は無論、文字はありませんでしたから、口伝へで歌ひつがれた素朴な詩です。
東歌の作者の多くは、貧しい労働者だったでせう。
まさに、食べて、仕事して、セックスして、寝るだけで精一杯の、つらい日々を送ってゐたことでせう。
彼らには、無意味なものに興味を持つ余裕など無かったはずです。
しかし、千数百年も前の、教養など無いはずの、都から遠く離れた東国の、貧しい人々の間から、美しい詩が、奇跡的に生まれたのです。
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