寂しい織物?四つの破片 デッサン/前田ふむふむ
 
の空に封印した、枯葉のような春が甦る。


3・孤独な居間にて―

コーヒーの香りが、居間の空気に広がり、
その一部が直滑降を行く。
ジェットコースターの速さで、
窓辺の朝陽に溶け込んでゆく。
その、爽やかさに、わたしのなかで時間の鼓動が一瞬だけ輝く。
木製の食器棚の上の古い写真のなかの無彩色のわたしが、
無彩色のコートを着て、無彩色の空に溶け込んでゆく。
写真を見ている時間だけ、世界が止まっている。
テーブルには、わたししか電話番号を知らない、
携帯電話が置いてある。
誰からも掛かって来ない携帯電話が置いてある。
今日の真夜中に、一人の幽霊が、

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