寂しい織物?四つの破片 デッサン/前田ふむふむ
誰からも掛かって来ない携帯電話が鳴るのを、
じっと待っていた。
灰色のガウンを羽織った幽霊がうっすら微笑みながら、
じっと待っていた。
居間には、氷のような時間が、静かに流れていた。
小鳥が朝陽を持って来るまで。
4.夜
夜空に懸命に駆け昇った星たちは
金色の微笑を浮かべ、愛の歌を爪弾いている。
その星に隠れながら、
別の星は銀色の涙を流す
その美しさは、陳腐な地上の瓦礫を、
幾千万の星の洪水で
押し流してしまうだろう。
わたしは原っぱに仰向けに寝て、
朔太郎の詩を黙読しながら、
この夜と抱擁する。
ああ、この心臓の温かさは、
夜が確かに呼吸しているからだろう。
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