忘却の深層より?東京/前田ふむふむ
眼は、その端正な落ち着きを引き立てる、
痩せた半島の廃線の夢に流れて。
わたしは、素姓も定まらぬ淡い女が佇む、
一日をまぶしく過ぎる。
閃光を抱き、うっすら汗にまるめる、
はだけた衣服のもつれを、鳥瞰図のうえでなおして。
わたしは、暗い二つの大河に蜜月を欲した時代の、
濡れた考古の学を掘り出して、
十一月の愁眉が、
湧きあがる庭園で、法悦の夢にひたる。
その夢の断面より溢れる、
錐のような汽笛の声に乞われて、
南へ延びる驟雨を浴びる。
旅は香ばしく発酵して――、
青い炎のように、揺れる街を、指でなぞれば、
アルコールに耽溺した女が、
震える手で、
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