忘却の深層より?東京/前田ふむふむ
 

繋がらない恋情の海路を描いた、眠らない、
初夏の暗礁が、よみがえる。

東京、その甘美な調べに染まり、
わたしは、衣擦れの都会に、暫く、流れる。
退廃の街を唾液に混ぜて、
わたしは、いくたびも、自由の陶酔に靡き、
眼差しを、灼熱した詭弁の秩序を塗した、
螺旋の空の踊り場に横たえる。

わずかに、ずれる心音が肯く。
赤い剃刀が撫ぜるような、白い闇が、
空虚な寂寞の夢に広がり。

 ・・・・・・・
・・・・・・・

聴こえるだろう。
さらさらと流れる、みずのおとが。

あの日も、父は流れていたという。
東京の聡明
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