浴 室/「Y」
に、私は安らぎさえ覚えていた。
前の車が動き出した。私はアクセルを踏んだ。
銀灰色に光るアスファルトを見つめながら、私は車を走らせていた。つい今しがた目のあたりにした浴室の光景が、目の奥にちらついていた。
マンションの駐車場に車を入れ、部屋に入る。午後八時すぎだった。
キッチンのテーブルの上に、琴美のメモがあった。
『お疲れさま。眠くなったので寝ます。コトミ』
シャワーを浴びた後、キッチンのテーブルに座り、テレビを点けた。グラスにウイスキーを2センチほど注ぐ。生のまま飲んだ。
テレビはニュース映像を映し出していた。今朝起きた火災の現場だ。
昨日までは、当たり前のよ
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