浴 室/「Y」
 
の熱が、彼女の病状を更に悪化させることとなった。
今にして思えば、彼女への私の態度は傲慢にすぎたのだろう。私は常に琴美の外側に立って、彼女のことを攻め立てていたのだ。
 去年の十月に、彼女の体の状態に対してはっきりとした病名が付けられてから、彼女と外界とを結ぶ幾つかの通路が、次々に閉ざされていった。最初に、新聞とテレビを見ることができなくなり、そのあと、私と彼女の寝室が、別々のものとなった。そして十二月の初旬、彼女は仕事に出ることができなくなった。琴美の病名は「鬱病」だった。
 私は、去年の暮れに彼女と交わした会話を思い起こしていた。
明かりのついていないベッドルームに彼女は腰掛けていた。
[次のページ]
戻る   Point(3)