浴 室/「Y」
 
た。日が傾き、カーテンごしに差し込んでくる日の光はすっかり弱まっていたので、部屋に置かれた家具も、ベッドに腰掛けた琴美の横顔も、すべてがモノトーンに沈んでいた。
「一度診断を受けたら、楽になったよ。たぶん、きちんと病名が付いたからだと思う」
「何故だろう」
「病名が付いていない状態は、治す手立ても無いから、だからしんどい」
「不安定な状態だからか」
「そうだね。……自分に合う薬が見つかるまでの我慢だって言っていた。先生が」
「そうか」
 あの時の、発する一語一語をまさぐるような、琴美のたどたどしい喋り声が、まだ耳にこびり付いている。結局、琴美と「合う薬」は見つかり、現在は摂取量を減ら
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