肺 茸/「Y」
 
は泣き出してしまった。

 結局、肺茸は天ぷらにして食べる事にした。
 正直言って、自分の体内から採れたものとはいえ、一人で食べるのには俺にも少々抵抗があった。だから俺は、妻も「道連れ」にしようと考え、熱心に彼女を説得した。嫌がる妻をなだめるのは骨が折れたが、結局彼女は、俺と一緒に肺茸を食べる事に同意してくれた。

 テーブルの上で香ばしい匂いを立てている揚げたての肺茸を、妻は無言のまま見詰めていた。
「ほれ」
 コップを突き出し、ビールを注ぐように妻に促すと、妻は一瞬、びくんッと身を震わせた。
「あ、ゴメンなさい」
 ビールが程よい量の泡を立てながらグラスに注がれていく。
 
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