北と南のあいだ/とうどうせいら
ふるさとは
わたしにとって
苦手な場所でした。
長い冬に降り篭められた繊細な神経で
暗い空の下でお互いを勘繰る
優しく弱い人達の集まりで
それは
自分にもとても似ていたので。
悲しいことも
思い出すので
わたしは多分、
当分金沢へは行きません。
でも好き嫌いとは別に
雨は
わたしの体を潤しては
大丈夫だよと
繰り返してきます。
ずっとずっと
前から。
わたしがひとになって生まれてくる前から
刻まれているみたいに。
雨の音は優しいと気付いたのは
わたしが不細工だということに
泣いて
顔を洗って
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