北と南のあいだ/とうどうせいら
って
腫れたまぶたを開けて
庭を見た日でした。
毎日まいにち
些細なことが
どうしても許せなくて嫌でした。
血の滴るような感受性を持ちながら
自分に向かってしかそれが開かれていない
十五歳の朝でした。
世界も泣いていると思いました。
椿の葉が滴っていました。
泣きながら呼吸していると思いました。
わたし一人が泣いたぐらいでは
この雨に
紛れてしまってわからない。
誰にも気付かれない。
誰かが知らないふりをしてくれることに
その時は慰められました。
福岡はあったかいと思って
移り住んできたけれど
実は海に面してい
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