クレゾールは時計仕掛け/
 
懐かしむ僕を背中に
どかどかどか、と 騒がしい音が響く
続いて、あいたたた、と
細君の声
、非常に申し訳なく思う
僕の悲しみの後始末ばかり手伝わせて
未だに過去にしがみつき
捨てられない、このアルバムの所在も
君は大切な思い出だからと
優しく笑ってくれる

大丈夫か、と
顔を出した僕を見上げ、汗を拭きながら
咲き誇る
まるで、日向葵のように


おい、もういい、もういい
それより、御茶にしようじゃないか
昨夜、隣りの幸治君から貰った漬物があっただろう
あれを、切ってくれないか

返事も早々に、埃だらけの割烹着を脱ぎつつ
台所へと駆け込んだ、細君の後ろ姿
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