クレゾールは時計仕掛け/
 
ろ姿を眺めながら
今日の陽射しに
そよいでいた

鼻孔を掠めるは、幼少の頃
クレゾール
秒刻み、分刻み

刻む音は 台所から、トントン、トン、




残りのウヰスキーを、ごくりと流し込み
喉を焼くと
居間へと顔を出した
あらあら、まだ仕度が出来ていませんのに
困った顔で振り向く細君に
いい、いいんだ、と
笑って椅子に腰かけた


あなたの笑う顔、とても久し振りに見たような気がしますわ
そう、囁きながら 漬物を切っている後ろ姿
しゃんしゃんと沸く やかんの湯気
御免なさいね、私、臭いでしょ
鼻が馬鹿になってるから、折角の味も台無し、ああ勿体無い
いやいや、いい、いいんだ

あら、あなた、本当にどうしましたの?
声が笑ってますわよ、うふふふ
なんだか、結婚した頃を思い出してしまいそう


ああ、僕もだよ
僕もだ、僕も―――――――。









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