秒針とのコンポジション/前方後円墳
 
ない冬の海に
わたしを連れてきたことを
知っていて
海にでも 砂にでも
好きなところに来ることができます

そんな父の
硬い手を握りながら
取れかかった袖のボタンが落ちないか
ずっと ずっと見ていたので
浜辺に打ち上げられていたはずの
よろこびも
かなしみも
知らない



(?)

半壊した小屋に
投網がだらしない

折れ曲がった秒針が一本
潮で錆びています

母は
投網を
秒針を
捨てて
きっと 幼い頃と同じように
わたしを撲つのです

打ち捨てる母の
浮腫んだ指
血管の這う乳房
かきむしった背中
その体温
気づいている
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