カピバラの事情/佐野権太
 

月あかりに染まる
カピの柔らかい脇腹を
何度も撫でてやった




二、 土産


カピが女房と
六匹の子カピを伴ったのも
月の綺麗な夜だった

 (その節は、主人がお世話になりました
女房は律儀にひざまずき
ココナッツビスケットの箱を差し出す
遠慮したが
女房は身体を伏せたまま、びくともしない
後ろで子カピたちが
じっと様子をうかがっているので
苦笑しながら受け取った



昔話に花が咲いた
女房は積んでおいた洗濯ものを
黙々と畳んでゆく
子カピらはその横で
鞠(まり)のように、じゃれている

先程貰った土産を広げてやる
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