桶狭間にて, 五十六人目の藤吉郎/do_pi_can
も耳貸さず,血なまぐさい武具を身にまとい
ほれ,家飛び出した
走れ,走れぇい,走ったところで,歴史の使いにはなれんがや
顔の半分以上も隠れるマスクをした若者達のいびつなバイクの群れが
激しい音を立てて走り去る
その道路脇の家の庭で,昨夜の布団が干される。
知っちょるきゃ
歴史が,何で作られるか
わしや,あん馬鹿者が駆け抜けて,それが歴史じゃとは大間違いだがや
兵は,何も生み出さん。
大将も,征夷大将軍様も
帝様も
何も作り出さんでよぉ
食えと,懐から泥だらけの握り飯を差し出す
血の匂いがする
米ではない
米にしては固い
昨日,あのあたりに住まわっと
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