桶狭間にて, 五十六人目の藤吉郎/do_pi_can
 
っとった後家が握ってくれただぎゃ
ちゃんと逃げたかのう
おおかた,連れ回されて,殺されるだぎゃ
むごいのう

さてと と,
五十六人目の藤吉郎はもと来たほうに帰っていく
疲れを知らぬ,しっかりした足取りだ
地面を確実に踏みしめて,
歩くたびに脹脛の筋肉が,交互に盛り上がる
と,立ち止まり,振り返る

歴史はよう,
ああやって,武士どもが踏み散らかした後の地面を
百姓が,もう一度耕すがや,
その後に,作物が生えるがや
そこから,生まれるで
それが,歴史だぎゃ
忘れたらいかん

にゃっと笑った,泥の下で
目が涼しい

さっき貰った握り飯が
土くれになって
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