くじらのいるそら/夕凪ここあ
っては、
空と体とが溶け合ってしまいますからね。)
あんなに向こうまで見渡せるというのに
懐かしい海は欠片も見えてはきません。
小さなくじらは大きなくじらの後ろですっかり橙色です。
大きなくじらはその色に懐かしさを覚えましたが
すぐに小さなくじらの手を引いて
もう後ろを振り返りませんでした。
(何故って、夕暮れの終わりに夜が見え隠れしていましたから。)
大きなくじらは故郷の海を想って音もなく鳴きました。
鳴き声は、すぐに風になって遥か下に見える
木々や木の葉を揺らします。
ざわめきはすぐにくじらたちのもとまでやってきます。
(何しろ、もとは鳴き声なのですから、
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