くじらのいるそら/夕凪ここあ
 

自分たちに聞こえなければおかしいですからね。)
そしてその声は故郷の波の音のようでした。
大きなくじらのお腹の下に隠れていた
小さなくじらが小さく小さく震えます。
気づけば、あたりは夜に包まれています。
それはまるで故郷の海の懐かしい色でした。


夜がすっかり深まった頃、
くじらたちを見たものは誰もいません。
それもそのはず、その時間は町も人も森も小さな花でさえ
明日を迎えるための眠りの中にいたのですから。
それにこの町には、くじらが帰るべき海はなかったのです。
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