『ゴースト・ソング』/大覚アキラ
 
  土砂降りの中で
  遠くの高層ビルが
  マッチのように
  燃えていた

  雨の匂いと
  煙の匂いと
  おんなの化粧の匂いが
  混じりあって
  酒に似た香りが
  漂っていた



「霊魂」

  ぼくたちは
  しょせん
  霊魂だ

  拠り所のない
  あやふやな
  生臭さだ

  フワフワして
  クセになる
  やさしい手触りだ

  喉元を
  滑り落ちてゆく
  気持ちよさだ

  何もかも忘れ去って
  手を繋ぐ
  あやうさだ

  言葉だけで破裂する
  脆すぎる
  霊魂だ


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