13号地埠頭/水町綜助
てひろがってうすらいでいくだけ
柵を越えて
あのみどり色のさびた柵はとてもひくいものだから
それを越えて沖へ伸びる防波堤を歩こう
海面に突き刺さる長い木の枝どこから生えたんだろう
白いビニールの袋泡だった海のみず
おなじリズム
突堤の恋人
その影が示す波の切れるところ
向こう岸は見えない
海鳥の記憶
羽を広げる見えない音
暁色に染まったビルは立体感を失い
海鳥が羽を広げる
ゆっくりと
海鳥が羽を
僕の記憶
生まれた場所の記憶
そこを離れた記憶
束ねた白爪草と黒い煙
波間に漂って
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