夜の子供たち/atsuchan69
 
が空いているのを見た。
「いらっしゃいませ」
 マスターはこちらをちらっとだけ覗いた。ちょうど誰かのコーヒーを淹れているところだった。
 カウンターに客はなく、たぶん僕と同じくらいの年の娘が座っていた。彼女は、あわてて席を立ち、ワンテンポ遅れて、
「いらっしゃいませ」そう言うと、すこし恥ずかしそうな顔で笑みをつくった。
 僕が席に着くと、
「ご注文はいかが致しましょうか?」
 水と御絞りを運んだ。
「ブレンド。笑顔はいらない」
 僕はわざとつめたい口調で言った。
 彼女は肩を窄め、
「かしこまりました」
 やや脹れた顔をした。
 その後すぐ、背の高い男が店に入ってきた。
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