プールサイドにて/三州生桑
私は思はず笑ってしまふ。まだ全く無防備なんだなぁ。
「こっちの方が温かいもん。深いけど気を付けるし」
顔立ちの整った子だった。美少女と言ってもいいだらう。
少女は、人懐っこく私に話しかけてくる。
「もう二十五メートル泳げるよ」
「やっぱり、あっちで泳いだ方が・・・」
「いいの、いいの!」
何かあってはと気が気ではなかった。
私は、そっと手を上げて監視員を呼び、一所懸命にバタ脚の練習をしてゐる少女を指差した。
可哀さうだけれど、私は保護者ではないのだから。
「駄目ぢゃない、そこに入っちゃ」
若い女の監視員が注意すると、少女は脱兎のごとく水から飛び出し、隣のプールに飛び込んだ
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