サイレント・ブルー/光冨郁也
 
たしを支え、静かに手をとって、沖に運んでくれる。曲げた四肢を伸ばし、届かない足の先に、海流がある。つかまれた手は伸びきり、ひきずられていく。風が星のありかを教え、斜めの空にまばたく。潮から、はねる水が、口に入り、口内炎にしみる。乏しい視力に、ゆく先は知れない。腰のくびれに、だれかの手がまわる。わたしを支えるだれかを、認められない。首をねじまげると、風が水滴とともに、目に入る。つむる。風の音がする。波がわたしの首筋をうつ。見えない手が、左の足首をつかむ。肉のえぐれた痕に爪がかかる。わたしの髪は海面の下で舞う。気泡が包む。暗い空が、一転する。下半身にうろこがあたる。青白い肌の女が、わたしをすくめる。彼
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