サイレント・ブルー/光冨郁也
 
つかまれた球体。

テープが途中でとまり、雨音だけがする。アクセサリーを沈め、浴槽に頭をあずける。正面にある、小さな鏡に映る、前髪のたれた顔は、ぼやけて見えない。水面に目を落とす、と、ゆらぐ湯が、体に手をまわす。濡れた髪がまつげにかかり、水滴が目に流れ込む。左の唇を吸い込む。内側でふくらみ、盛り上がっている。眉をひそめ、ふるわす。

膝を曲げたまま、壁に体を倒し、閉じた目に、静かな、青が、わたしを眠りにさそい、水晶を、唇におしつける。むせび、体をゆすり、水が波うつ。

入浴剤の青が、ゆれる、銀色の浴槽。子どものように身をちぢめ、暗い上を見る。見えない空、夜の海で眠ろうとしている。わたし
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