Tea For One (ひとりでお茶を)/石畑由紀子
ー帽のような膨らみをもって鎮座していたその形のままカットされたタルトの上には、ブルーベリー・ラズベリー・クランベリー・ストロベリーがふんだんに盛られている。それらとタルトの間にあるクリームチーズの層と一緒に口にはこぶと、甘味と酸味、香りがふんわりと踊る。ベリーの味で充満した口の中を中和させるため紅茶を口にしながら、そしてゆったりと読書しながら、タルトを食べ終わった。
チェアと同系の濃紺のミトンに包まれた白いティーポットには、まだもう一杯分の紅茶が残っていた。どうしよう……あまりに幸せただようショーケースの中、もう1ピース食べたくなって迷っていた。ザッハトルテにしようか、それともまたショーケ
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