Tea For One (ひとりでお茶を)/石畑由紀子
ブルでメニューを広げ、コムサブレンドのホットティとベリータルトを注文する。カフェ内はほの暗く、しかし陰気さは微塵も感じられない。木目調のライトブラウンのテーブルと、黒に近い濃紺のフェイクレザーチェアがゆったりと配置されている。
ケーキが届くまでの間、しばし読書にふける。天井から、ちょうどよい角度と光量で各テーブルが照らされている。私のテーブルに射す、私のためだけの灯り。機内灯が消された最終便の飛行機内で客室乗務員にピンライトを射してもらった時の感覚に似ていた。客のそれぞれが自分のためだけのライトの下でそれぞれの会話を弾ませている。
ベリータルトは絶品であった。ショーケースの中でベレー帽
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