遠い雨音/大覚アキラ
 


深夜に、
記憶の中の薔薇を、
遠い雨音を、
思い出してみる。
今日、
夕方、
18時過ぎ。
三ノ宮駅の改札で再会したのは
15年以上も前に別れた恋人で、
彼女は
「会いたかった」と言ったが、
ぼくは会いたくはなかった。
あんまりいい別れ方ではなかったし、
あれから15年以上経った今でも、
最後のときの彼女の涙を夢に見て
暗い気持ちで目覚めることがあるほどだから。
ごく事務的な近況報告を交わし、
携帯電話の番号を訊かれる前に
その場を立ち去った。
改札を抜けて振り返ると、
雑踏の中に立って
ぼくをじっと見つめている
彼女の姿があった。
ぼくは怖
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