遠い雨音/
大覚アキラ
は怖くなって、
慌ててエスカレーターを駆け上がり、
ホームに入ってきた電車の行き先も確かめず、
とりあえず飛び乗った。
とっくの昔に
終わった恋だと思っているのは
ぼくの方だけで、
彼女は今もまだ、
あの街の、
あのワンルームマンションの一室で、
あの頃のまま
ぼくがフラっとやって来るのを
待っているのだろうか。
深夜に、
記憶の中の薔薇と、
遠い雨音を
忘れようとする。
戻る
編
削
Point
(3)