吊られた葉っぱ/加藤泰清
 
。彼女は赤の他人だろうと信じた。その事実が餡美の音響が、よりいっそう、蜃気楼が私を好かんとしてくれている。豪儀だ。たった数時間の出来事の中で勉強する暇あると申すか。五月六日 晴れ 彼の彼女がわしを好いてくれようと、いくらも無意味なことだ。わしがその真意を信じられなければなにも変わらない。私のそっと爪先の一箇所を、聡子はぺろ、と舐めた。「その内結婚しよう」私は軽蔑しきった目で、力強く聡子を見つめた。聡子は舐めている。手元に落っこちていたガーターベルトをそっと拾ったことを(蛆虫を潰さぬように摘まむような指で)、彼女は果たして識っているだろうか。ブラジャーはH70。そこで乱暴に彼女の口にビンを詰めこんだ
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