銀色の夏に生まれて/窪ワタル
 
み易い上に、他と比べればはるかに安価な「詩学」を購読することになった。勿論、田舎の書店には「詩学」など置いていない。図書館で定期購読の用紙を盗み出して記入し、翌日、母校の最寄にあった郵便局から申し込みをし、そこに私書箱を持って、到着日に取りに行くのだった。17歳の少年だった私にとっては、詩を書いていると知られることはとにかく恥ずかしいことだった。ほんの数人の友人を除いて、家族にさえ、知られぬためには、そんな面倒な手段を取るのも当然なことのようにおもっていたのである。

今、私は銀色夏生氏に感謝している。彼女がいなければ、私は今でも、あのぼんやりとした、ただ甘ったるいだけの「ポエム」の世界に囚わ
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