脳内生物ミズキちゃん/加藤泰清
 
ってろよ? ここにいるなら」
「いや……だからなんでコイツと対談してるかって訊いてんだって」
 俺は木田の発言を黙殺した。前を見遣ると彼は既に動きを止め、元の形に収まっていた。ただその手だけが、盤上で指を艶(あで)やかに滑らせる。渇いた音が繋がって淀みがない。男子や女子の談笑、むやみやたらに走り回る騒音、そして押し殺された笑い声。この教室にそぐわない音が、俺の耳の奥に抜けていく。響く。腹の奥で一瞬急激に体温が減るような、寒気を感じた。
「……ミズキちゃんは、あー、脳内のどこにいる?」
 どこにでもいる。手は素っ気なく答える。
「はっは。まあ脳だしな」
 木田は嘲りと嫌悪が入り交じ
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