遠い場所へ届こうとする言葉 ??中村剛彦『壜の中の炎』について/岡部淳太郎
 
を追って読んでゆく。巻頭の表題作がこの詩集の声のトーンを予告している。


{引用=窓に飾った古いガラス壜の中に、小さな月が灯った
小さくても部屋のかしこに、光は届いた
それはあなたと出会った夜のこと
 
それまで壜の中では、野心の青い炎が一つ
ゆらゆらと揺れ、ときに罪の色を帯び
ひときわ大きくうねっていたものだが
 
あの夜からずっと、小さな月は壜の中に灯っている
今宵は、この孤独な月を吹き消して
あなたに捧げる赤い炎を灯そう
 
やがて赤い炎は青い炎と一つとなり
おのずと小さな太陽となり輝きはじめる
そしてもう、あなたのもとに、光は届いている
 
(「壜の
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