古代人のヒッチハイク/岡部淳太郎
 
も、鳥のように空を
飛ぼうとして、墜落することを選ぶのだ。あ
あ、母の中に神が宿っています。けっして父
の中にではありません。母は少なく、父は無
駄に多く、子の数は無限。そして、うたはひ
とつ。大きすぎるたったひとつ。人は葉の眠
りの中で、咽喉から母を生み出す。水は人か
ら人へ、霊から霊へ、時から時へと、乗り換
えてゆく。たとえ水を吐き出して、墜落して
しまったとしても、水は不変に存在している。
それが古い信仰のしきたりであったのだ。う
ううううう。うた。かすかにふるえる世界。



罅割れた咽喉を開く
  この咽喉に水の歌を流しこめ
道も 唇も 空も
罅割れ
[次のページ]
戻る   Point(10)