古代人のヒッチハイク/岡部淳太郎
 
ようにして
いまも旅をつづけている



おおおおおお。驚嘆のひと時が過ぎれば、も
う世界は乾いた子音の侵略を受け入れている。
か行からわ行まで、子を負った母は、辛苦の
旅をつづける。だが、いまだ時は始まったば
かり。人は古代の祭祀の中で母の純潔を求め、
子を路頭に迷わせることを良しとする。縄で
刻まれた傷で正邪を判定し、焔の中に生まれ
たばかりの骨をくべる。ああああああ。偉大
なる母の復活。恋などという感情からはまだ
遠く、ただ恐怖とそれに付随した畏敬のみが
ある。狩るべきは、日々の糧と、迷うだけの
こころ。眠りを超えて眠りの中へと入ってい
きながら、人はこの
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