月を抱く/千月 話子
朝焼けに燃え尽くされて 空
「熱を帯びたから、私行くわ。」
そう言うと 彼女の全身から
冷たい汗が吹き出したのだった。
憶えているのは 丸い尻
しっとりと 揉んだ
憶えているのは 柔らかい腹
臍で 感じた
顔を思い出そうか 青く光る
顔を思い出そうか 青白く光る
そういえば 夢で見た
昨日の月は美しかった
寝床の位置を替えて ずっと見ていた
手を伸ばし 妄想の感触
輪郭を中指で そぅとなぞった
ああ、、夢現の狭間で
抱いていたのは誰だったのか
濡れもせず 窪んだ跡もないシーツに
手の平を置き 指でなぞる
今夜もまた 幻の女
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