氷の瞳/まほし
 
ってわたしは
人形 じゃない
冬に魂を売り渡して
人間 になったのだから
後戻りできないまま
ぬくもりの重みで溶けていきました


あなたが
わたしの姿を露わにするまで
氷を削ったように
わたしも
あなたの影で脈打つものを見とおしたい



その思いが
頑なだった両腕を、動かして


二人きりの暮らしを、抱かせました



?


さようなら
の 一歩手前で
あなたが瞼に口づけても
泣くことさえ許されないのでしょうか


氷に戻れない、と
冬が耳打ちしても
目元から水になって消えていくのを
止めることができない



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