氷の瞳/まほし
 
( 夜明けの嵐が
( 寒さを刻々とゆるめながら戸を叩く


さようなら
は 永遠で
二人の底を絶えず流れていたもので
わたしが 今
いっしょに流れていこうとするのを
あなたは 置いてきぼりにされた子どものように
見ている


わたしも、そう
見たかった、だけ


あなたが目にしている世界は
あなたの目が果てしなく欠けているから
あなたは目を捕らえるための人形を作ろうとした


その思いを宿して、産声を上げたのが、わたし



失われるように
流れていく視界に
涙眼を映していたのは
あなた、だったか
わたし、だったか


知っているのは
二人が暮らした工房で
ツン、と 芽生えた


光の双葉だけ――



戻る   Point(9)