[ 天使と僕(ゆめくい)]/渕崎。
僕は眠いのに眠れないという苛立ちを持て余しながら、
ぎっと暢気な自称天使を睨み付けた。
自称天使はちょっと困った顔をしてぷかりと水槽の中で泳ぐ観賞魚のように身を翻し、
それでは『お話をひとつしてあげましょう』といい、滔々と語り始めた。
どこか懐かしい子守唄にも似た、
語り口調の柔らかい旋律で、
天使は滔々と語りだす。
『バクは夢を食べて生きているのです』
出だしはそう始まった。
夢喰いの獏(ばく)は、人間の悪夢を食べて生きていると伝えられているけれど、
それはほんのちょっとの本当で獏は夢という夢なら何でも好んで食べるらしい。
もっとも好物なのは子供の無邪
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