初期詩篇選集「尾行者の音楽」/岡部淳太郎
 



{引用=歌声 空にとける
鳥は知る
法則と想念の間でゆれる
歴史のあやうさを

歌声 雲にとける
人は知ることはない
自らの欲望がどれほど強く
未来をゆさぶるかを

それでも人は歌う
時間の壁に囲まれ
名前のつけられない悲しみについて

それでも人は歌う
歌うしか途はなかった
それ以外の途は閉ざされていた



歌声 風にとける
鳥は知る(知らなければ飛べないのだ)
どのメロディーが大気をふるわせるかを
どのリズムが大地を鼓動させるかを

歌声 陽にとける(こだますることなく)
人は知ろうと試みる
互いの弱点も知らないまま

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