セックスボランティア(R18)/宮前のん
手を洗ってペーパーで水気を切ると、車椅子のポケットの文献を取り出して、戸を開けた。トイレの戸を開きっ放しの状態にしておいて、彼に向かって
「もう私、行きますよ。あとはご自分で病棟に帰れますよね?」
すると彼は、車椅子で後ろ向きのまま、私に向かってこう言ったのである。
「に、握ってくれて、ありがとう」
電気の消えた暗い1階の廊下を小走りに急ぎながら、私は自分でもわかるくらいに赤面し、そして憤慨していた。今が夜中で良かったと思った、それぐらい形相が歪んでいたと思う。目の前の文献の文字が揺らぐほどに怒りを覚えていた。
要するに、私は利用されたのだ。彼の性的欲望のはけ口として。トイレ
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