プールの底/はなびーる
戦いの星
子どもの名を呼んでみる
答えるでもなく快活な歌声が響いている
歌は風になって水面をさざめかせる
月はふたつに分かれたりくっついたり
くしゃくしゃになったりする
赤い星がそのまわりで踊っている
「聴こえない」
彼の声が湿り気を帯びる
私は気づかないふりをする
(こわれかけたあなたの巻貝)
あの時彼は子どもの声を聴こうとしなかった
いや、聴いても理解できなかった
私は大声で彼をなじった
彼の戸惑いを理解できなかった
いま、彼は聴こうとしている
けれど私たちからはもう子どもの姿が見えない
プールには私たちだけしかいない
魚一匹、
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