プールの底/はなびーる
 
匹、泳いでもいない
歌声は小さくなってやがて止んだ

「眠りましょう、あの子もきっと眠ったのよ」
彼は安心したように布団にもぐりこむ
私はもう大声でなじったりしない
彼のそばを離れたりしない
たとえ、子どもを見失ったとしても

         (心穏やかな、波のない、プールの底)



私たちが
プールの底から出ることは
もう、ないのかもしれない


   
   ※初出・ウェブ同人詩誌「めろめろ」一六〇号
    その後、加筆訂正

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