たけのことり/砂木
うとしたところ
方角を 見失ったのである
見渡す限り 似たような木 木漏れ日 鳥の声
朝は 暖かみを増してきたが
みえたのは 山の静寂 だった
どっちだっけ
頼りになるのは舅だけ しかし はっきりしない
捜索のヘリコプター 消防団 かかる費用
舅と嫁の 白骨死体
いきなり遭難リストにのり 新聞に出る自分がみえた
なによりも みるからに立派なたけのこを
蹴散らして引き返そうとする舅に 心底 恐怖した
待って ちょっと待って
私は止めた
少し 休もう ちょっと 待って
舅の足が止まる
とりにきた たけのこが 眼にはいらないほどなのに
目印まで 引き
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