オイカワ/MOJO
寒さに強い体質と自負していたから、日が高くなると水に入り泳ぎ始めた。友人たちにマッチョなところを見せたい気持ちもあった。
本栖湖は、太古から吐き出されてきた富士山の溶岩が蓄積したせいか、あるいは水温が低すぎるせいか、岸から近いところで素もぐりしても、魚はおろか水草さえ見えない。
しかし、それは突然おきた。
空腹を覚えた私は、水から上がり焚き火にあたりながら、キャンプの老婆がつくってくれた山菜を具にしたでかい握り飯を頬張った。食後の一服のハイライトを吸うと、長袖のトレーナーを着込みギターを弾いて軟弱なフォークソングを歌っている友人たちを尻目に、私はまた湖に入っていった。
楕円形の水中
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)